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====第1話==== 3月8日

突然ですが、このほど「World Wood Day 2017」というイベントに参加する為、ロサンゼルスに行くことになりました。
主催のInternational Wood Culture Society(国際木文化学会)という財団法人より「伝統の木版画制作のデモンストレーションをこのイベントで是非行って頂きたい」とのオファーを受け、私の作品作りに協力して頂いている、彫師の関岡さんと摺師の岡田さんと同行して、参加することになりました。
現地では、彫り、摺り、の実演に加えて、作品や工具の展示、それらの説明、そして20分ほどのプレゼンなども予定されており、出国は3月19日、帰国が29日の予定です。
渡航費用や滞在費、準備費用も協会側が負担して頂けるというありがたいお話ですが、今そのもろもろの準備に忙殺されております。

====第2話==== 3月8日

ロサンゼルスでのイベントにご招待頂いた、国際木文化学会という財団法人は、木材の活用を再認識し、研究・普及に努める非営利団体(協会)です。
年に1度「World Wood Day」と言われる、世界各地より木材を活用した工芸品や商品などを展示、紹介するイベントを、世界各地で開催しています。
伝統の木版画というものは、版木は山桜の木を使用し、和紙は楮100%ですから、確実に木材から生まれています。確かに、木材の特性を最高度に活用した木工芸品ですよね。
協会はそこに注目したのですが、その着眼点には、とても感銘を受けるものがあります。
【ご参考】World Wood Day 2017のポスターを添付しました。
(イベントURL)
http://www.worldwoodday.org/2017/
(参加メンバー紹介:私)
http://www.worldwoodday.org/2017/folkart_3

====第3話==== 3月24日

ロサンゼルスはカラリとした海風が吹く、さわやかな春となっています。 19日にロサンゼルスに到着以降、突貫工事を経て伝統木版のブースを作り、彫り&摺り作業の実演を行っています。
(添付資料の解説)
上:場所はLong Beachのコンベンションセンター。すべてのブースは室内展示であり、あまりの大きさの為、建物の全体像は未だよく分かりません。。
中:床を底上げする方法は、現地のスタッフのアイディアにより、セメントブロックを多数並べて厚い木板を乗せて実現できました。壁が無いので、作品を普通には飾れませんが、テーブル上に並べて、一部角度を付けて、見栄えを良くしています。
下:実演を始めると、次々と見学者が集まってきます。かなりテクニカルな質問を受けたりもして、解説に尽力しています。説明して「Amazing!」と叫ばれる方もいて、嬉しくなります。

====第4話==== 3月25日

今回、北斎の名作「神奈川沖浪裏」の版木をハンドキャリーして、摺り作業の実演を行っています。
摺りの作業が始まると、たくさんの人が集まってきて、私もその解説で大忙しです。
この作品の極めて優秀なところは、これだけの名画であるのにもかかわらず、たったの8〜9回摺りで完成できることです。イベントにおいては、摺り始めから完成までのすべてをお見せすることができるので、本当に助かります。
浮世絵の絵師は筆で墨線を描いただけで、絵作りは職人の腕によるものなのですが、北斎においては職人のことまで考えたデザイン作りをしていたので、まさしく天才です。
天才北斎には、感謝、感謝です。

====第5話==== 3月25日

今回、写真のような資料を大量にコピー&パウチにして、見学者にお渡しするようにしています。
これは、ヒルトン名古屋への導入の際、その支配人より、伝統木版とはどんなものかまとめた資料を作ってもらいたい、とのリクエストがあって作成したのもです。
たまたま、神奈川沖浪裏を題材にまとめたので、今回のイベントにもピッタリな資料となりました。
また、今回のイベントでは販売は禁止となっていますが、自社PRなどはOKなので、この資料の下部には浮世木版H.PのPRも入れて、見学者が後日購入ができるようにしています。

====第6話==== 4月7日

すでにロサンゼルスからは無事帰国しました。後追いとなりますが、現地レポートの続報を紹介致します。
現地にて北斎「神奈川沖浪裏」の摺り実演を行いましたが、仕上がり品には「規格外品 Spec Out Product」とのスタンプを押して、見学者に贈呈するようにしました。
(上部写真ご参照)
これは、現地の環境下では十分な品質を確保することが難しいので、職人としては人に渡したくないという意向があった反面、協会側からは無償で見学者に渡したいという意向があり、この相反する意向を両立する為に、私が考え出した”苦肉の策”でした。
このスタンプで、贈呈する問題は解決しましたが、仕上がる数量が見学者の数に満たない為、贈呈する人を選ぶ必要がありました。
まず、実演作業をじっくり見られる方を最優先としました。そして貢ぎ物を持っ来る方も。つまり、トレードですね。そんなトレード品は、今回のイベントにおける各国の木作品でもあり、写真と共に紹介します。
(写真中段左)
アラビア文字をアートとして描く方からの貢ぎ物。私の名前「川崎章治」をアラビア文字でアーティスティックに描いてくれました。
(写真中段右)
歴史的にいって、日本の浮世絵のルーツは中国の木版にありますが、その古典的な技法をそのまま現在に受け継いだ中国木版です。白黒の1回摺りですから、すごい数を摺っていました。
(写真下段左)
韓国のシンさんから頂いた木製のオブジェ。何を意味するのか分からないところが、韓国風‥?
(写真下段中)
フィリピンの木製コマ。カラフルな色を彫りを入れて引き立てています。結構、よく回ります。
(写真下段右)
台湾の人から頂いたダイヤモンドカットした木工芸品。薄い板との合板構造となっています。台湾の木材加工技術、恐るべし!

====第7話==== 4月7日

このイベントの期間中、すべての参加者は同じホテルに宿泊しました。それは、クイーン・メリー号。なんと全長310mもある大型客船でした。
本船は1936年から1967年にかけて北大西洋を横断する定期便として運航していて、あのオードリー・ヘプバーン なども乗船したことのある豪華客船だったそうです。
1967年に引退後は、ホテルとして改装されここロングビーチに静態保存されています。写真からすると、いかにも豪華客船!という感じですが、1967年に改装されたままのようで、内装にしろ設備にしろ、単なる古めかしいホテル感が強いです。
部屋は参加者すべてグループ部屋で、我々は2室ある3人部屋でした。船主と船尾に大きなレストラン部屋があり、そこでの食事がフリーでしたが、典型的なアメリカ食でしたので「まずくはない」という感じでした。宿泊費、食事代すべて協会持ちでしたから、贅沢は言えませんね‥。
まあ一応、豪華客船に泊まった、ということにはなるのかな?

====第8話==== 4月13日

今回のイベント名は「World Wood Day 2017」といい、世界100カ国以上の参加があり、各国の手作り木製品を製作現場を見せながら紹介する、というような展示会でした。
下の写真にあるような、大きな木工芸品を手作りしているブースが多く、ノミをハンマーで叩いて削る音が、会場中に響き渡っていました。でも中には、丸太から極めて微細な3D加工を行う造形アートもあって、そのレベルの高さには驚かされました。(写真左下)
ただ、どこの国の作品も、木材を加工して、一部着色を加えて完成するのが一般的ですが、我が国の伝統木版とは、そんな程度のものではありません。木材を加工した版木を何枚も作り、全く別工程で楮100%の和紙を作り、何10回もの多色摺りによって、完成に至ります。
我が伝統木版ブースはとても人気があったのですが、その異次元ともいえる製作技法が、あたかも驚愕マジックのように見受けられていたようです。

====第9話==== 4月13日

日本からの参加は、私達だけではなく他にもありました。 ひとつは、現代風からくり人形(AUTOMATA)を制作されている、原田夫妻です。
http://nizo.jp/
写真にあるような、ユーモアのあるからくり人形を多数作られていますが、作品を見てもらうだけでなく、デコレーションメガネを参加者に作ってもらうようなイベントをやられていました。
あと、大学教授で参加されている方もいました。島根大学の山下晃功教授ですが、カンナ職人の善し悪しを物理的に解析・研究された方ですが、このイベントでは「ロボッキー」が注目されていました。(写真左下)これ(彼?)は、ロボットの形をしていながら、なんと100%木材でできており、何も動く仕掛けがありません。彼は絵本で登場する森の妖精というか、主人公げんき君のお友達なんですよね‥。
http://www.mokuiku.jp/tools/kamishibai/
木育の一環として、その絵本を紹介すると共に、15cmくらいの組み立て式ロボッキーを配布していました。それが、摺師岡田さんのツボにはまり、惜しげも無く作品を身にまとった「浮世絵ロボッキー」を即席で完成させて、山下教授にプレゼントしました。(写真右下)
こんな感じで、日本人通しの交流も深まったんですよね。

====第10話==== 4月27日

今回のロサンゼル遠征で、貴重な体験ができたことは、世界の多くの人たちに木版画とそれを作る作業を見て頂き、会話を通して様々な意見を聞けたことでした。また、どんな説明をすると、驚き、喜ばれるかも学べたことも貴重な体験でした。
現地の木版画ブースからそれを振り返ってみます。
1)摺師が摺り作業を始めると、たくさんの人が集まってきます。(写真上部左)
2)この作品では9回の重ね摺り作業ですが、4回の重ね摺りで完成するサンプルにて重ね摺りの原理を説明します。特に「見当」の説明によって、正確な位置合わせができることに感動する人が出てきます。(写真上部右)
3)各色ごとに版木を彫りますが、いかにして精巧な彫りを行うかを実際の版木を使って説明し、そのレベルの高さに驚嘆する人が出てきます。また、下絵は版木に描くのではなく、原画を上下反転で貼付けて下絵としますので、その誤差ゼロの古典技術に感銘する人もいました。(写真中央右)
4)再び摺り作業にて、裏から作品を見てもらいます。色が裏からも見えることから、これが通常の機械印刷との決定的な違い、と説明します。機械印刷ではインクが紙の表面に乗っているのに対して、木版画は絵の具が紙を貫通しているからこそ、独特の発色をしていることを理解・共感して「だから3D的にも見えるのね」と言ってくれる人もいました。
5)再び、作業しているのは9回の重ね摺りですが、と前おきして、陳列している作品を見てもらいます。江戸時代デザインの浮世絵では、15回〜20回摺り、と説明して浮世木版オリジナル作品を指差して「これだと40回位くらい」と説明します。すると"Amazing!"と叫ぶ方が多くいて、オリジナル作品を絶賛される方もみえました。とても嬉しい経験でした。(写真下部)

====第11話==== 4月27日

今回のイベント「World Wood Day 2017」はロサンゼルスでの開催でしたが、今年で5年めとなり、過去4年の開催地と参加国、参加者は次のようなものだったそうです。
2013年 タンザニア(ダルエスサラーム) 45カ国 300名
2014年 中国(仙遊)        71カ国 300名
2015年 トルコ(エスキシェヒル)   93カ国 380名
2016年 ネパール(カトマンス)   100カ国 500名
そして今年は、85カ国 580名だったそうです。
主催はIWCS(International Wood Culture Society: 国際木文化学会)ですが、当初はちょっと怪しい協会かな〜?と思っていましたが、終わってみますと、渡航費用に宿泊費、食事代のみならず、国内での準備費用、材料費、交通費などもきっちり支払って頂けて、すこぶる真っ当な協会でした。
下の写真は、IWCSスタッフから頂いた、我々のブース用のPR資料と参加証書です。
職人さん2名も当初はあまり乗る気がない面もありましたが、終わってみますと、いろいろと学ぶことがあってか「また行きたい!」と言うようになり、とても嬉しく思われます。 我が伝統木版チームはIWCSスタッフからの評価も高いようで、来年もオファーされそうな気配が強いです。来年はどこの国になるかは分かりませんが、またお呼びがあれば世界のどこへなりとも喜んで参加したいと思っています。