純和式の畳が浮世絵の額縁になりました
まず最初に、原画を構成している色の絵に分解します。
この例では7色で構成されているので、7色の絵に分解します。
彫師(彫りの専門職人)により、個々の絵は左右反転にして、計7枚の版木が正確に彫り起こされます。
7枚の版木は、摺師(摺りの専門職人)により、順番に重ね摺りされます。
正確に重ね摺りされて7枚目の版木まで終われば、木版画の完成となります。
ただし、実際には7回摺りではなく、ぼかしなどを表現する為に、1枚の版木に対して複数回摺ることもあります。
上記の「色の数だけ版木を作る」というのは、かなり基礎的な方法です。実際には、より高度な技法を用い、版木の数より多い色の数を、重ね摺りで
表現することができます。 例えば、下の富士山においては、3枚の版木による3色(A色、B色、C色)の
重ね摺りによって富士山全体を表現しています。
出来上がった富士山には、A色、B色、C色の3色のみならず、
A+B色、B+C色、A+C色という合成色も含まれており、合計6色が3回の
重ね摺りで表現できています。
重ね摺りよって合成色ができるように版木作りをしておくことが必要ですが、
この技法では、表現したい色の数より少ない回数の重ね摺りで済みますから、摺りの作業効率を向上させる、という利点があります。
また、デザイン面においても、「輪郭線のない絵に対応できる」という利点があります。
例えば、上図の四角い部分を目的画として、基礎的な技法で木版画にしてみましょう。
この画は2色で構成されていますから、図1、図2のような版木を用意します。
それを重ね摺りした場合、若干のズレを生じて図3のような絵になることが多いです。
図3の拡大図のように、色と色の隙間が白くなったり、濃い色が付いたりしてしまいます。
図4と図5を重ね摺りして図6(目的画)になるように、図4と図5の色を調整します。
図4の色は目的画のA部の色と同じにすればいいのですが、図5の色は図4の色との
合成色が目的画のB部となるように調整しなければなりません。
場合によっては調整できない(合成色では表現できない)場合もあります。
作業効率やデザイン性を向上させる大変有効な技法ではありますが、
その色の調整には熟練を要します。